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思考と行動における言語
岩波書店(1985)
その他
S.I.ハヤカワ
★★★★
ソフトウエア開発者において、自国の言語を習得する重要性は、ダイクストラに指摘されるまでもなく、明らかである。しかし、これはソフトウエア開発に特有なことではなく、全ての業種、もっと広く、政治、社会に共通する。
本書を紹介しようと思ったきっかけは、「日経コンピュータ」の書評である。とはいっても新刊ではなく40年以上も読み継がれている名著で、言語とコミュニケーションに関する研究で、豊富な例を交えたわかりやすい説明であり、実用的な価値も大きい。思考、話し合い、議論、説得において言語の果たす役割、陥りやすい誤りを指摘している。
これがソフトウエア開発にどう関係するかというと、人間同士のコミュニケーションを、偏見を排除して建設的に行う方法を示しているからだ。大規模なプロジェクトになるほど、個人の時間でコミュニケーションに費やす時間が増える。この時、例えば議論の中で「よい」「悪い」の2値論に陥らずに、建設的なアウトプットを出すにはどうすればよいか、抽象レベルの混同による混乱を避けるには何に注意すればよいか、といった事などである。ワインバーグのアプローチに通じるところがあると言える。もっとも著者の意向はもっと大きな、社会の問題、国家間の問題、さらに文明の問題を例に取っている。
さて本書からいくつかの規則をひろってみると、
○記号は物そのものでなない。地図はそれが代表する現地ではない。コトバは物ではない。
○文脈が意味を決定する
○二値的考え方は、考えの初まりにはなるが、舵とりの要具にはならない。
○定義に用心せよ。それはコトバについてのコトバである。できるだけ、定義で考えるよりも、実例で考えよ。
いずれも表現は簡潔だが、深いことを言っているし、実践もなかなか難しい。
訳者の大久保忠利は後書きで、「コトバの魔術破り」の方法を示している、とうまいことを言っている。

