プログラミングの心理学
プログラミングの心理学
著 ジェラルド・M. ワインバーグ
翻訳 木村 泉
翻訳 久野 靖
翻訳 角田 博保
翻訳 白浜 律雄
出版社/レーベル 毎日コミュニケーションズ
出版日 2005-02
★★★★★
ソフト開発に携わる全ての方に強く本書を薦める。いろいろなところで言及される古典です。出てくる技術は古いが、本質的な議論は現在でも的を得ている。豊富な実例とユーモアで飽きさせない。今回出版されたのは、「25周年記念版」。今までの原稿はそのままに、各章でワインバーグがコメントを書いている。ただ私には余計なことのように思われる。その記述の是非は読者が判断すればよいのである。それにもかかわらず、十分面白いので、エピソードのひとつと、エピローグを紹介します。
第6章 プログラミングプロジェクト
「閉会の前に、もう一度確認したい。」と彼はいった。「分担したところが今週中に終わらない可能性のある人はいますか。」
返事はなかったが、管理者はたっぷり六十秒間待ちつづけた。ついにチームリーダーの一人がかすかに、まるで気づかれたくないかのように手を動かした。だが管理者は見逃さなかった。「ジョージ、何か問題があるのかい。」
ジョージはもじもじしながらこういった。「ほんのちょっとですが・・・。」
「どのくらいほんのちょっとなの?」
「ちょっと遅れてるんです。」
「どのくらい?」
「ううむ、多分六週間。」
部屋中が大騒ぎになった。「六週間だって?」と全員が一斉に叫んだ。「みんなでシステムテストの準備をしているときに、六週間も遅れていながら、よくもそこでそうやって、会議の間中黙っていられたもんだ!」
管理者は他のチームリーダーたちを静まらせ、システムテスト部隊をホテルに待機させるための出費が実際に発生してしまう以前に、問題があることを認めたジョージの勇気をたたえた。しばらく話し合った後彼は、担当部分を四週間で完成させるようにジョージを説得し、システムテストのスケジュールを改訂した。そして、今度こそ閉会にしようというとき、もう一度何か問題はないか、と問いかけた。
「いやあ、あのう、」と別のチームリーダーが、言いにくそうに切り出した。「ジョージが四週間もらえるんだったら、ウチも欲しいんですがねえ。」
「ということは、君のところもできていないということ?」と管理者はたずねた。
「厳密に言えばですが・・・。」
「厳密に言えばどのくらい?」
「多分六週間だけど、でも四週間で何とかやってみますよ。」
こうして堰が切れてみれば、結局のところ六つのサブシステムは、全部スケジュール遅れを起こしている、ということがわかった。にもかかわらずもしジョージが、全員わかっていることを自認する口火を切らなかったとしたら、問題があろうなどとは露知らない、という形で会合が終わり、実りのないシステムテストが莫大な費用を費やして開始されるところだったのである。
第5部 エピローグ
人の頭脳は、いつもは容量のわずか10パーセントしか働いていない。残りはオペレーティングシステムのオーバーヘッドだ。
この本に動かされるところのあった人々は、コンピュータのオペレーティングシステムにばかり気を使うのをやめて、彼が自分の中央処理装置、つまり彼自身の頭脳と一緒に持ち歩いているオペレーティングシステムに注意を向け始めるのだ。

