日本のソフトウェア産業がいつまでもダメな理由

| | コメント(0)
nihonnosoftware.jpg久手堅憲之

技術評論社(2008)

エンジニアへの提言

火事場と呼ばれる問題プロジェクトで生きがいを探す前に、組織の再発防止策をチェックしよう。でなければ、一生火事場暮らしになりかねない。

自分に最適なキャリアパスを会社が用意してくれるなどとは、間違っても信じないこと。自分のキャリアパスは自分でデザインするもの。そのために何をなすべきかを考えよう。

組織は教訓を学ばず、環境を整えず、人を育てない。自分を伸ばすためには結局、自分で自分を磨くしかない。

あなたがお客さんと話して胃が痛くなるのなら、自分の交渉カードを聞かされる側に回ったときにどう感じるか考えてみよう。まともな話でなければ、誰がそれを言わせているのかに考えをめぐらせてみよう。

どうしても今の会社でやりたいことがある人以外は、一度は組織を離れる選択肢について考えてみよう。自分の価値を見直し、磨こうとすることが長い目で見て損になるはずがない。

会社は本当に個としてのスキルの探求を期待しているのか考えてみよう。それが中途半端なら時間の無駄で終わってしまうかもしれない。

自分にしかできないことを何でもいいから探してみよう。学んだ技術を使って、好きなことを追求することが飯の種になることもある。

エンジニアの道を追求するのなら、自分の足で立つべきだ。今にあっては腕だけで食えるのはよほどの場合だけだから、もう一度、誰にとっての自分の仕事の価値かという視点に立ち返ってみよう。

ユーザーへの警鐘

ソフトウェアを作る側には、「効率」という言葉は眼中にないことを意識しよう。その成果物を使えば何かが効率化できるなどとは安易に考えないようにしよう。

「IT投資で企業競争力を強化、国際優位性を保てる」などは、かなりマユツバだと思っていい。「技術大国・日本」は、ことソフトウェアの世界では迷信にすぎない。

要求開発や設計の前にコストをきちんと算定することは不可能に近い。人月単位の開発計画は、信憑性を疑ってかからなければいけない。

ソフトウェア導入のコスト効果にもっと敏感になろう。これからは国内ベンダー一辺倒というわけにはいかなくなる。国内と海外の開発ベンダーそれぞれのメリット、デメリットを見極める目を持とう。

六本木ヒルズに入居する企業だけがIT企業なのではない。本当にIT能力を問われているのは、ITユーザーであるすべての企業だ。

情報システム作りで大手ベンダーへの安易なブランド信仰に走っていないだろうか。「大手なら安心」はすでに迷信だ。自分たちで頭をひねった仕組みしか結局はうまく回らない。

自社だけは特殊と口走ったことがあれば、少し考えてみよう。実際にはオンリーワンは稀で、会社なんてどこも似たようなものだ。

IT投資の額はまともなものか、その投資でいくら儲かるのか、ユーザー組織内での議論を忘れてはいけない。工数ばかりが増える非効率なシステム開発で得をするのは、結局はベンダーだ。

ITの重要性を議論せず、大手ベンダーに任せきりにして、社内改革を否定し、効果測定を無視する。以上を守れば「ゴミシステム」を確実に手に入れることができる。

エピローグ

「エンジニアは、医者や弁護士と同じように、プロフェッショナリズムにもっとも近い職業の1つだと思うんですよ。国家免許とか何とかいう話とは別にね。コンピュータを自在に操る、神の手を持っているんです。シロウトにはない特異な技術を持っているということの価値を当人たちが気づいていない。そのことをもっと意識して欲しいですね。自分たちには特殊な技能があるんだ、と。新しい技術を追いながら自分の神の手を磨き続けると、プロフェッショナルとして生きていけると思う。会社はこんなことを教えてはくれないし、自分で気づくチャンスは限られている。それで、会社の引いた線をトボトボと歩いているという格好になってしまっているのではないでしょうか。もったいないと思いますよ。みんな本当に素晴らしいんだから、もっとその才能を発揮して、それが世の中から感謝される経験をして欲しいといつも思います。個人的な趣味に走る傾向の人が多い世界なのは確かなので、収益とかいろんなビジネス的な観点で、世の中やお客さんが期待する方向に自分を向けることは、そんなに得意じゃないところもある。でも、プロフェッショナル意識を強く持って、方向をそろえる人が多く出てくれば、すごく大きなパワーになるはずです。」

カテゴリ

コメントする

このブログ記事について

このページは、Hiroshiが2008年6月16日 08:16に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ウチのシステムはなぜ使えない」です。

次のブログ記事は「トム・デマルコの「プロジェクト管理」がわかる本」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.0